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平成27年7月号 139
トコブシ刺身盛合わせ
FISH FOOD TIMES 読者の皆さん、紙面の刷新に少しは驚かれただろうか。
過日ある方に、弊社の「ホームページが前時代的な装い」だという指摘を受け、それが今回のスタイル変更のきっかけになったのだが、確かに筆者の心の中にも「このスタイルは少し古臭いかな・・・」との思いをずっと長く引きずっている「心の引っかかり」のような気持ちが存在していたことは間違いない。
それでも敢えて単純な「画像中心で、文字が大きく、行間をたっぷりとって、見やすく、分かりやすい記事風の内容でありたい」という思いのスタイルに拘り続けてきたのは「これはこれで他のホームページとは違う独自性を打ち出せるはずだ」との考えがあり、前月の138号まで11年半もの長い間、前時代的な装いのスタイルを維持し続けてきたという経緯がある。
しかし「前時代的な装い」ということを指摘されて、改めて前号までのホームページスタイルを率直な気持ちで客観的に見直してみると、それは間違いなく「古臭い」と言われても仕方ないものがあることを自分自身納得したことで、今号から「スタイル一新」を決断した。
スタイル一新とは言っても、ITの専門家でも何でもない筆者自身が毎月「1から10まで全て手作り」でこのホームページを更新しているのだから、残念ながら嫌でも「素人っぽさ」を隠すことは出来ないのは百も承知のことであり、今回のホームページスタイルについても専門家から見ればまだまだ先進的ではないと言われてしまうだろうが、しかしそれはそもそもITのプロではない人間が運営しているが故の限界があることは読者の皆さん方にもご承知していただきたい。
また自動車のニューモデルやパソコンOSのバージョンアップによく有りがちな「初期不良」に類するものは往々にして起こり得るものであり、しかも内容を校正してくれる環境がない筆者にはその可能性は高いものがあるので、読者の皆さんがもし今回の更新したスタイルの中に何かケアレスミス的な問題点を発見されたら、それを是非弊社にご連絡いただければありがたい。
トコブシとアワビの見分け方
さて前置きはこれくらいにして今月のテーマである「トコブシ」について触れていこう。
トコブシは夏の産卵を前にして6月から7月頃が一番の食べ時となり、美味しくなる時期である。
読者の皆さんは以下の同じような大きさの貝の画像を見て、どちらがトコブシでどちらがアワビか、直ぐに判断できるであろうか。
殻上部の画像
直ぐに見分けがつく人はプロ、どこで判断するのか分からない人は素人・・・。
・・・そうは言っても、アワビはまだしもトコブシなんて見たことも扱ったこともないという人もいるのではないかと思う。
アワビの小さいのがトコブシではなく、分類学上アワビは <軟体動物・腹足類・原始複足目・ミミガイ科・アワビ属>であり、トコブシは <軟体動物・腹足類・原始複足目・ミミガイ科・トコブシ属>である。ミミガイ科までは一緒なのでそれほど遠くない仲間ではあるが、互いの交雑種は生まれないようなので同じ種類ではないとして区別されている。
それでは似たような格好なのにどこで見分けるのかと言うと、呼水口と呼ばれる殻の表面にある穴の数を比べてみるとよい。
画像の左の方には4ヶか5ヶあるようだが、右の方は9ヶ確認できるはずだ。
この穴の違いが一つ目の見分け方で、左がアワビであり、右がトコブシ。
アワビは孔(呼水口)と呼ばれる穴の数が平均4個ほどだが、右のトコブシはこれよりも多く6〜9個ほどある。この孔は成長にしたがってエラの位置がずれていくため、エラから遠い奥の孔から順に塞がれていくらしい。
そして、もう一つの見分ける特徴は下の画像だ。
殻の側面画像
この画像を見ると、左側は穴が小高い山のように突きだしていて、右の方の穴は突き出さずになだらかな状態なのが確認できると思う。左の突きだした方がアワビで、なだらかな方がトコブシであり、これも見分け方の特徴として活用できる。
更にもう一つ、いつも魚を扱うプロであれば直ぐに気づく特徴がある。それは「強さと固さ」である。
同じような大きさのアワビとトコブシを水槽に入れておくと、どちらも習性として床や壁などに張り付く。このへばりついた状態のを取ろうとすると、トコブシはあまり力を要せず意外と簡単に外せるのだが、アワビの場合は外すのがそれほど簡単ではなく、100g以上の大きさともなると普通は素手で外せないのでフライ返しなどの道具を使わなければ外せないことになる。
つまり、トコブシは筋肉の強さが比較的弱めで柔らかく、アワビは身質が固いだけでなく力も強い特徴があるのだ。
但し、アワビの中でも特にクロアワビは身質が固くて強いが、アカと呼ばれるメガイアワビはクロアワビほど固くないし強くもない。
残念ながらエゾアワビとマダカアワビについて、筆者は今のところクロアワビと比較する形でその固さと強さを確認できていないので分からないが、比較ができた人の話によるとエゾアワビの身質はクロアワビと同じくらい固く、マダカアワビはそれほどは固くないらしい。
次にアワビとトコブシの違いを殻の裏からも見てみよう。
左がアワビで右がトコブシ。
1,
2,
3,
左のアワビは小さいけれどアワビの中のアワビと称される「クロアワビ」なのだが、もうこのような身だけの状態になってしまうと、その見た目だけではアワビなのかトコブシなのか区別がつかなくなる。
刺身にするのはトコブシではなくアワビの方だけだという意見もあるが、そう言いながらも固さの違うクロアワビとメダカアワビを区別せずに刺身にしていることも多いようだ。
通称アカと呼ばれるメダカアワビはクロアワビのあのカチカチの固さというものは期待できず、まるで別物のような存在なのだが、それぞれはそのような食感の違いがあっても「アワビ刺身」として通用するのであれば、トコブシだって煮付けばかりではなく刺身としても通用するのではないか・・・、と考えて商品化したのが巻頭画像である。
2015年5月時点での築地市場トコブシの月間平均卸価格は3,285円/1kgで、同じ月の築地市場アワビの月間平均卸価格(クロ・アカの違いは不明)は7,598円/1kgだったようだ。
そして筆者の関係先はこの小さなアワビを5,000円/1kg、トコブシは3,500円/1kgで仕入れていたので、それぞれは以下の画像の原価となった。
アワビ・トコブシ原価
それぞれを計量をしてみると、アワビは34g、トコブシは29gしかないので、原価はアワビが170円でトコブシが101円だ。
トコブシを刺身盛合わせに使うとすると、一山が100円ほどの原価で納まるのであれば、刺身盛合わせ材料としては大いに役立つと考えて商品化したのが巻頭の画像である。
巻頭画像は父の日に対応した商品として6月初めにある企業で提案したのだが、世の中のお父さん達も超高価なアワビを1ケというのはなかなか簡単に食べられなくても、このように生本マグロの大トロ・中トロやイシダイ炙りなどが少なめに3切れずつ入っていて、これと一緒に殻付きのトコブシが小さくても1ケ盛り付けられている見栄えの良い刺身盛合わせを食卓に出されたら、お父さん達は大満足ではないかと考えたのだった。
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更新日時 平成27年 7月 1日